前向きニュース (2020年7月11日)


『脱皮の予感』

打球が1・2塁間に転がる。
1塁手が弾いて、2塁手も慌てて、ピッチャーがカバーに入ろうと走ってくるところで視界にタクミが入ってきた。
内野安打になるか?
懸命に1塁に向かうタクミにベンチ・応援の全員が注目していた。

5対3で迎えた4回裏。
1番から始まるこの回に逆転の可能性ありと期待して始まった。

制球はいいがスピードのない相手ピッチャーの球に、スイングスピードまで合わせてしまっていた先頭のテッペイが、ここはうまくセンター前に運んでその期待は確信に一歩近づいた。

バッターはユキト。
初回にチーム初ヒットを放って、2点取られた後のチームを鼓舞した。
先発ピッチャーとして68球。
何度もピンチがあったが、よく抑えていた。
2点取られて、1点返して、1点取られて、1点返して、これを繰り返して、2点差を保ってきた。
見方によっては2点差が埋まらいともいえるが、崩れることなく最少失点に抑える投球を続けていた。
1点差に迫ってもまた2点差になる展開なのに、もどかしさよリも頼もしさを感じた。

この回もユキトは期待通りヒットを放ちノーアウトで1点差。

打席はコータロー。
相変わらず緊張しーのコータローは、初回のショートゴロをうまくさばきながら、腕が縮んで本塁にワンバンの送球。
格好よく本塁タッチアウトの見せ場を逃した。
このチャンスも凡退だったが、コータローがチームの中心打者で守備の要であることは変わらない。
相手にとっても最もプレッシャーのかかる選手だから、次はもう少しリラックスしていこう。

あと1点取って早く追いつきたいところで、次はヤマト。
新しく手に入れたビヨンドバットでうまく捉えると打球がよく飛ぶ。
飛ばしたがりのヤマトにはぴったりなバットを買ってもらって、ますます振り回す感じはあるが、それはそれでなかなかの迫力である。
相手もちょっとビビッて、この試合では貴重な四球を選んだ。

この日タイムリー2塁打を打ったタイガが打席に立つ。
初回の2塁打は素晴らしかった。
左中間に飛んでいく打球と走っていく姿に伝説のホームランバッター白土園芸を重ねた。
白土園芸はホームランにしたけど、タイガは2塁打、まだまだ園芸見習いだがやはり素質十分。
ここは残念ながらファールフライに倒れたが、頼もしくなってきた。
コータロー、ヤマト、タイガのクリーンアップはなかなか見ごたえがある。

リョーセイは前の打席、ランナー3塁でお手本のように右に打って、ランナーを返した。
打撃に関してのリョーセイへの期待は大きいし、チャンスに必ず打ってくれるから信頼も大きい。
打つことに関しては太鼓の達人で鍛えているリョーセイが期待に応えてセンター前ヒット。
この日2打点目。この試合初めて追いついた。

時間的にこの回で終わるとすれば、次の1点でサヨナラだ。
三塁のヤマト、一塁のリョーセイ、どちらも足の速さに難があるから代走が必要だ。
どっちに代走?と思ったら、リョーセイに代走アキラ。
次の回に続いた時の守備も考えたか。
確かに、今日のヤマトはショーバンをうまく捌いたり、安定感のある一塁守備を見せていた。
更に回が続くとしたら、逆転してさらにもう1点ほしい。
こういう時に代走に出せる足の速い選手がいることはとても大事なこと。
頼むぞアキラ。

2アウトでヒロムの打順。
ヒロムは4回表途中からユキトに代わってマウンドに上がった。
球は走っていた。
こちらから見ていても球の伸びを感じたし、しっかり腕も振れていた。
満塁の場面で2ストライクと追い込んでからデッドボールで1点を取られた。
悪い癖が出たように感じたけど、ここから修正してこのあと点をやらなかったことがこの試合を引き締めた。
そのピッチングのリズムがバッティングにも反映されて、逆転のヒットを放った。
この回3点目、6対5と遂に逆転した。

ハルトは前の打席バントヒット(?)で塁に出た。
キャッチングを見ていても今日はリズムがいい感じがした。
こういう時は守備に行くときも、打席に向かう時も楽しそうだ。
泥のついたボールを頻繁に交換したり、パスボールにも慌てなかったり、落ち着いたプレーが続いていた。
二人のピッチャーと呼吸が合っているように感じた。

落ち着いているハルトが四球を選んで、2アウト満塁になった。
そして打席は9番タクミ。

タクミはその前もチャンスに打席が回ってきたが空振り三振。
朝の練習で空振りしなくなっていたから、このくらいのスピードのピッチャーなら打てるだろうと期待していたが残念だった。
一球空振りの後、真ん中高めのボールを強振。
打球は1・2塁間に転がった。
タクミ写真
いつものようにきちんと腕を振り、足を上げて、一塁ベースだけを見つめてタクミが走ってくる。
コロナ自粛の間、6回実施したオンライン練習の野球クイズで一番正解が多かったのがタクミだった。
少しひねった問題もきちんと考えて、しっかり答えを出すその姿そのままに、内野ゴロを弾いている一塁手を横目に黙々と一塁に向かう。
カバーに入るピッチャー、弾いた打球を捕り直してピッチャーにトスする一塁手。
一つ一つのプレーがスローモーションのように見えていた。

「セーフ!」
一塁塁審の両手が開いた。

「やったー!!!」
大きな声を出したり、騒いだりしてはいけない今の状況だけど、思わず声が出た。
ハイタッチや握手やハグはしなかったけど、その分目頭が熱くなった。

コーチとしては、すべての選手に活躍してほしいと思っている。
でも、なかなかうまくなれない、一生懸命やっているけど結果が出ない選手が活躍したときは特に嬉しい。

5回表に1点取られて、7対6。
結果として、タクミのあの1点が今日の勝利をもたらした。

いろんな選手が活躍して、簡単に崩れなくて、ベンチもよく応援した今日のような試合ができるようになれば、もっと勝てるようになるだろう。

依田監督、公式戦初勝利おめでとうございます。
イレギュラーなシーズンだけど、楽しそうに野球をやっている子供たちの姿を見られるのは嬉しいね。


池谷