前向きニュース (2017年6月25日)


『集合写真』

バックネットの前でみんなで写真を撮る姿は、まるで優勝したチームのようだが、そこにはトロフィーはなかった。
写真に映る大人たちはみな笑顔なのに対して、選手たちは総じて納得いかない顔をしているし、中には泣いている選手もいる。
この表情がこの試合を物語ると同時に、監督・コーチたちの手ごたえと選手たちの成長を表わしていた。

城北公園に到着したとき、1回の裏だった。
聞けば1回表に2点入れたという。しかもそれがツーランスクイズだということを聞いて、驚きとこの試合の勝利への可能性を強く感じた。

ツーランスクイズは、やろうと思わなければできないし、やろうと思ってもできない。
選手の意識の高さとベンチとの意思疎通が合って初めて成功する、それなりに高度な作戦だ。
キーとなる2点目のホームを踏んだのは、リュウノスケだと聞いた。

この試合、リュウのショートの守備もよかった。満塁のピンチで2つのゴロを続けて捌き、しっかりアウトを取って点を与えなかった。
最初のバックホームは落ち着いていたし、2つ目のゴロを捕って自らセカンドに入ったプレーは、しっかりと状況判断していて、頭を使った野球ができるようになっている。

マウンドでチヒロが投げている。球の速さに重みも加わって、ミットに収まる球の音が心地いい響きだ。
5年前優勝した時のチームのエース、マサトにも似た無駄のないフォームで、マサトより身体が大きい分堂々として見える。エースの風格になってきた。

久しぶりにセイダイがキャッチャーをやっている。やっぱりうまい。
キャッチャーゴロを追いかける速さ、ショーバンを捌くキャッチング、スローイング、見ていて安心できるから内野が全体として締まる。
ショートで要になるのもいいけど、守備機会の多さを考えれば、キャッチャーの方がチームにとっ有効じゃないかと思えた。

正捕手だったショウタロウがファーストにいる。キャッチャーで鍛えられた分ボールの捌き方がうまくなっている。背も伸びたショータローがファーストにいる姿もしっくりする。

サードのケイスケもしっかりしていた。サードへの牽制球もケイスケがサードにいると安心して見ていられる。
サードは強い打球に動じない強さが必要だが、飄々としたケイスケには似合っているのかも知れない。

セカンドのカンタが牽制で二塁に入るタイミングがうまくなった。
ショートにセイダイがいたときには頼り過ぎて遠慮していたのかも知れない。
しっかりと自分で考えて動くことができるようになってきた。

初めて見たこの内野の新布陣がよく機能していて、それがこの試合を引き締め、時間制限がある少年野球では珍しい6回まで回を進めた。

2-1、1点リードのまま5回裏を迎えた。
初回の2点以降点が入らない展開はもどかしくもあったが、チャンスにカンタがホームスチールを試みるなど、ベンチの攻めの姿勢とそれを理解して実行する選手の姿はチームと選手の成長を感じさせる。

3連続四球でノーアウト満塁のピンチを招き、ピッチャーはショウタロウへと替わった。
新布陣の内野にボールが飛べばアウトにできる。そんな期待を持って見守っていた。
相手打者が高めのボールをうまく外野に運ぼうと打った打球が飛球となってライトに飛ぶ。
構えるのはコウヤ。
視界に打球とコウヤの姿だけが映る。
コウヤが打球の落下点を見極めて動く、構える、
息を止めて見守った。

キャッチ!

タッチアップするランナー。ホームへの返球が間に合わず、同点とされた。

でも、このライトフライキャッチは感激した。
初めてコウヤが試合でフライを捕るのを見た。
しかもフライを捕った後、それで終わらずちゃんとバックホームした姿がまたまた成長を感じた。
コウヤは当たり前じゃんみたいな顔してたけど、こっちはうれしかった。

この試合ピンチになるとマウンドに集まって何度か選手同士で話をしていた。
その時外野でエイシンがコウヤとアツヒロに声をかけて集まって何事が話していた。
何を話しているのかはわからないけど、エイシンは自分が外野で要であるという自覚が出てきたのだと思った。
外野から内野の様子をボーっと見ているのではなく、自分たちも次に何するか考える、そういう当事者意識がコウヤのプレーにも通じたのだろう。

結局この回3点を入れられ逆転された。
しかし、ずるずる行かずに3点で止めたことは逆転の期待を抱かせた。

3アウトを取って、選手がベンチに戻ってくる。
アツヒロがレフトから全力で走ってくる。
まだ試合経験の少ないアツヒロは、十分には活躍できないけれど、こうやって全力で走ってくる姿はチームを鼓舞する。
こういう一つ一つの動きがこの試合を引き締めたものにしている。

2-4となって最終回の攻撃を迎えた。
ワンアウトからショータローが塁に出た。
2アウトになったが、ここでケイスケが三遊間を抜ける鋭いヒット。こういう打球は気持ちが上がる。
この試合レフトを抜ける3塁打を放ったカンタが打席に立つ。
1球目空振り。
相変わらず力が入り過ぎているが、絶対打つという気迫が伝わってくるいい空振りだった。
3球目、打った打球はサードゴロ、一塁へヘッドスライディングで飛び込むカンタ。
セーフ!
2塁からショタロウが本塁を駆け抜け1点差。

このショウタロウのランニングもよかった。
1回のツーランスクイズをほうふつとさせる(見てないけど)プレーだ。

バッターはエイシン。
さっきの打席空振りの三振に倒れたが、いいスイングだった。
何より、見逃し三振が多かったエイシンが3回振って三振というのは、成長した証拠。
最後のチャンス、ダブルスチールも考えられたが、ベンチは動かず。エイシンに任せた。
皆の期待を一身に受けたエイシンの渾身のスイングは空を切り、三振。
ゲームセット。

しかし、最後も見事な空振りぶりだった。
投げ方、打ち方、見た目にフォームのいいエイシンだから、コツをつかんで軸がしっかりすれば見違えるほど打つようになるだろう。もう少し。

一緒に見ていた古屋さんが「ドキドキした」といい、ベンチ入りしてみていた内山コーチが「いい試合でしたね」と言った。
まだそんなにフリーズの試合を見ていない人たちから見ても、緊張感のある、締まった試合だった。

勝てそうな惜しい試合はこれまでにもあった。
でも今日の試合は、単に惜しいではなく、次につながりそうな成長を感じるいい試合だった。

閉会式後最後のベンチ前挨拶。
キャプテンショウタロウの声は頼もしく、それに呼応した選手たちの声は気合が入っていた。

毎年夏の合宿を経て、もう一段個々の選手もチームも強くなる。
前野リーグ戦も志村秋季も、区民大会も楽しみになってきた。
今度は優勝して、トロフィーや優勝旗を持って写真を撮ろう!

池谷